心臓移植とは

15.感染症

 免疫抑制療法を受けますと、体の抵抗力が低下していろいろな感染症にかかり易くなります。感染症は、あらゆる種類の病原体(ウイルス、細菌、真菌、原虫など)により生じてきますが、特に、普段からどこにでもいる(健康人には無害な)菌やウイルスも原因となることが多いようです。ですから上手に免疫機能のバランスをとりながら生活して行かねばなりません。
 移植後の感染症は、免疫抑制剤の使用量が多い術後3ヵ月以内に発生することが多く、肺炎、敗血症などの重症な感染症が時にみられます。移植後すぐには細菌性感染症、1~3カ月には真菌性(カビ)やウイルス性の感染症が、6カ月以降は日和見感染症(普通の免疫状態の人では発症しない感染症)が大池以降になります。免疫抑制剤が維持量になると抵抗力が増し、感染症にかかる頻度も減少し、あまり重症にならなくなります。
 このように移植後3ヵ月までは感染症には特に注意が必要で、微熱、全身倦怠感などの痛み、せきなどの体調の変化があったときには、すぐに担当医に連絡するか、外来を受診することが肝要です。またこの時期に定期的に検査を受けることも感染症の予防につながることは言うまでもありません。

感染症に対する注意

 心臓移植後は肺炎や敗血症などにかかりやすいので、普通の人以上に健康に注意しなくてはなりません。そして、ちょっとした風邪やけがをした場合や、おできなどができた場合でも担当医に連絡するか、外来を受診するのがよいことは先に述べたとおりです。
 発熱は拒絶反応でも感染症でも出現しますが、この両者の治療方法は全く正反対のことをすることになりますので(拒絶反応に対しては免疫抑制を強化するが、感染症の場合は免疫抑制を控え目にして抗生剤を使用する)、なるべく早く連絡をとり、適切な診断と治療を受けなければなりません。
 病原菌以外の真菌や原虫と呼ばれる微生物も感染源となりますので、イヌ、ネコ、鳥類などのペット(トキソプラズマやクリプトコッカスを持っている)を飼ったり、生肉や生魚(寄生虫を持っていることがある)を食べたりするのは差し控えなければなりません。
 頻回に手を洗ったり、毎日入浴をして体を清潔に保つこと、外出時には必ずマスクをすることも大切です。
 ちょとした怪我でも、感染すると重症な感染症に発展することがありますので、爪切りや髭そりにも注意が必要です。
 指示されたうがい薬で、うがいや口腔内の洗浄をこまめにすることも大切です。感染症を予防するための内服薬や、うがい薬については後の項に書いてありますので、そこを読んでください。