心臓移植とは

5.心臓移植

 心臓移植とは、死亡した他の方から心臓の提供を受け、これを自分の心臓のかわりに植え込み、この新しい心臓を維持して心不全から脱却し、延命を計ることを目標とする治療法です。
 心臓を提供する人をドナー、心臓移植を受ける人、つまりドナーから心臓の提供を受ける人をレシピエントといいます。
 心臓移植でないと助からないような重症の心機能障害に陥る病気には、例えば、広範囲の心筋梗塞、重症の特発性心筋症、高度な心筋障害を伴った心臓弁膜症、一部の先天性高度心奇形などがあります。
 心臓移植の適応となる時期は、内科系および外科系の循環器専門の医師が慎重に検討した上で、これまでの治療だけでは平均余命が1年以内であるか、心不全が改善しないと予想されたときです。
 また様々な薬剤や埋込型の除細動器(不整脈が出たときに自動的に電気刺激を行って不整脈を治療する器械)を植え込んでも治らないような重症な不整脈(心室頻拍、心室細動等)を持っていて、発作時に命を落とす可能性がある場合にも、心臓移植の適応となる場合があります。

 あとで心臓移植後の生活については述べますが、心臓移植を受けると拒絶反応を防ぐために、免疫抑制剤などを一生飲まなくてはいけません。また、感染症を防ぐため、生ものを食べたり、鳩や猫などのペットを飼ったりすることはできません。また、定期的に外来を受診したり、入院して検査を受けたりしなければなりません。元気になってから、いろいろと束縛されるのはつらいのですが、これを守らないと拒絶反応、感染症や合併症に罹って命を落とすことがあります。従って、心臓移植について、十分にご本人とご家族が理解されていることが非常に重要なのです。また、ドナーになられた方への感謝の気持ちがあれば、このような束縛も苦にならないと思います。